「のっぽ先生の先生の ペットと暮らそう!」 vol.205より
(たまなわ新聞、8月号掲載の記事)
🍀ヘルニアとは
私たち人間と同じように、ワンちゃんネコちゃんのお腹(腹腔)には
胃や腸、肝臓などの臓器があり、毎日働き続けています。
心臓や肺がある胸(胸腔)は背骨と肋骨でガードされていますが、
腹腔は背骨こそあるものの、肋骨に相当する骨はなく、
臓器は周囲の筋肉や筋膜によってよって保護されています。
日常の生活で何かの原因によりお腹に大きな圧力がかかり、
腹腔を覆う筋肉や筋膜に隙間が生じると、
本来特定の場所に収まっているべき臓器が、この隙間から押し出されてしまいます。
この状態を(腹壁:ふくへき)ヘルニア、と言います。
🐱ネコちゃんのヘルニア🐱
ネコちゃんはワンちゃんに比べ、ヘルニアになるケースは少ないのですが、
中でも交通事故が原因で起こる「横隔膜ヘルニア」は、よく見られます。
これは胸腔と腹腔を隔てる横隔膜が破れ、腹腔内の臓器が胸腔に入り込み、
呼吸困難を起こすものです。
🌿今回は、腹壁の隙間に内臓、主に腸や膀胱などが入りこむ形で突出する、
代表的な腹壁ヘルニアを説明します。
(棰間板ヘルニアや横隔膜ヘルニアは、やや特殊なものなので、またの機会にお話ししたいと思います。)
🍀ヘルニアの種類
ヘルニアは、どこに臓器が飛び出したかによって病名が変化します。
おへそ(臍)周り → 「臍(サイ)ヘルニア」
後ろ足の付け根 → 「鼠径(そけい)ヘルニア」
肛門周り → 「会陰(えいん)ヘルニア」
と呼びます。
🍀<各ヘルニアの説明>
●臍(さい・おへそ)ヘルニア
腹壁ヘルニアの代表で、俗に「出べそ」と呼ばれています。
主に先天的に発症し、遺伝が影響していると考えられます。
出生後、臍(おへそ)の部分が閉じず、そこから脂肪や臓器が押し出されている状態です。
一方、後天的に発症したものとして、避妊手術などの際に
縫合箇所から隙間ができて発症するケースもあります。
・臍(さい)ヘルニアが小さい場合
触ってみて、膨らみが柔らかく、指で押して戻ります。
ヘルニアは小さいと考えられ、経過観察になります。
・臍(さい)ヘルニアが大きい場合
症状は、便秘や腹部の痛み。
指で押しても戻らず、熱を伴います。
お腹の中の膀胱や腸が入り込み、排便障害や排尿障害を引き起こし、
放置すれば命に関わるので、外科手術が必要となります。
多くの場合、臍ヘルニアは仔犬仔猫の頃に発見され、
避妊手術や去勢手術などの際、一緒に手術します。
中高年になると様々な合併症が引き起こされるので、
発見した場合は動物病院を受診することをお勧め致します。
●鼠径(そけい)ヘルニア
俗に脱腸と呼ばれています。
後ろ足の付け根(鼠径(そけい)部)にある隙間から臓器が押し出されている状態です。
先天的に発症するものが多いですが、時に事故などの外傷で発症する場合もあります。
この隙間が大きいと、ヘルニア内に小腸が入り込んでしまい、腸の動きが悪くなり、
嘔吐・下痢・便秘・食欲低下、などが見られることがあります。
また、押し出された腸が元に戻らなくなり、隙間で絞めつけられた状態になると
ヘルニア部分が赤くなり、痛みや熱を伴い、早期の外科手術の適応になります。
●会陰(えいん)ヘルニア
加齢とともに、肛門周囲の筋肉が衰えて、
そこから主に、直腸、骨盤内の脂肪や膀胱、などが押し出されている状態です。
多くの場合、去勢手術をしていない高齢の雄(オス)犬が発症します。
症状は、肛門の周囲が膨らみます。
腸が飛び出している場合は、便秘や排便困難が見られます。
初期は食餌療法や緩下剤で便を出しやすくさせますが、
完治することはないので症状によっては外科手術が必要となります。
また、手術をしても再発しやすいことが知られています。
このヘルニアは去勢手術をすることで、発生率は低下します。
🍀最後に
いずれのヘルニアも、お腹に圧力が高くならないよう(例えば吠え過ぎなど)
に注意し、日々のスキンシップの中で膨らみを触り、
硬くなっていないか、大きくなっていないか、痛みはないか など
観察をしてあげて下さい。
8/16 鎌倉市大船 のっぽ動物病院でした。
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